個人開発のネタが思いつかない、という悩みはよくあります。でも実際は、ネタがないというより、ネタの見方を持っていないだけのことが多いです。多くの人は「すごいものを思いつかなきゃ」と考えます。社会を変える何か、巨大市場を狙える何か、誰も見たことがない何か。そういう大きいものを探し始めると、逆に手元の現実が見えなくなります。
自分は、個人開発のネタはまず自分の不便から探すのが一番強いと思っています。ここでいう不便は、単なるイライラではありません。毎回少し時間を取られること、毎回少し迷うこと、毎回少し気分が悪いことです。こういう小さい摩擦は、毎日触れているぶん解像度が高いです。何に困って、どこで止まり、どうなれば楽になるのかを、自分の言葉で話せます。だから、知らない市場を無理に当てに行くより、ずっと具体的に考えられます。
不便は最高のネタです。なぜなら、すでに自分が困っていて、しかも何が面倒かを説明できるからです。
この記事の要点
- 個人開発のネタは、遠い市場より自分の毎日の不便から探した方が具体的になります。
- 強いネタは、一回きりの不便より、何度も繰り返し起きる小さい面倒の中にあります。
- 最初のバージョンは、不便のど真ん中を一つだけ解くくらい小さく切った方が強いです。
- 自分の不便を機能の言葉に変えられると、ただの愚痴がプロダクトの種になります。
「面倒だった瞬間」を流さない
ネタにできる不便は、日常の中で一瞬だけ顔を出します。ファイル名を毎回整えるのがだるい。リンクを毎回探し直すのが面倒。ある確認のために三画面開くのが重い。こういう瞬間は、その場では小さいので流しがちです。でも、まさにそこにネタがあります。
重要なのは、「不便だった」で終わらせないことです。その場で一行だけでも残した方がいいです。何をしていた時に、どこで止まって、何がだるかったのか。この記録があるだけで、あとからただの感情ではなく、解ける課題に変わります。
不便の中でも「繰り返すもの」を拾う
一回しか起きない不便は、ネタとして弱いです。逆に、週に何回も起きるもの、毎回似た形で発生するものは強いです。個人開発の最初の種として優れているのは、珍しい問題ではなく、何回も自分の時間を削っている問題です。
ここで見るべきなのは規模ではなく頻度です。たった三分の面倒でも、毎日ならかなり強い。不便が小さく見えても、繰り返し発生しているなら十分ネタになります。むしろ個人開発は、この「小さいけど何度も起きる」を拾える人が強いです。
実際に作ってきたものも、だいたい自分の不便から始まっている
これは理屈だけではありません。自分が作ってきたものも、かなりこの流れです。たとえば ForceDiscordOverlay は、通話状況をデスクトップでも最前面に表示したい、という個人のめんどくささから作っています。通話している時、ゲームや別作業をしていると、今どういう状態なのかをすぐ見たい。そこに毎回小さな不便がありました。
だから ForceDiscordOverlay の ver1.0.0 は、通話状況をデスクトップでも最前面に表示できる、それだけの機能で出しています。最初から高機能な通話管理ツールにしようとはしていません。自分が本当に困っていた一点だけを切り出しているから、最初の形も素直に小さくできます。
ForceNotification も同じです。通知は届いているのに、欲しいタイミングで気づけない、もっと前に出てきてほしい。そういう自分の面倒から発想しています。現状作っている メモリ最適化ツール(仮) も、まさにそうです。自分がやっていることに合わせて、バックグラウンドで動いているサービスを止めたいと何度も思った。その繰り返しが、そのままネタになっています。
つまり、ネタは「思いつく」ものというより、「すでに何度も思っていたことを回収する」ものです。これが分かると、個人開発のネタ探しはかなり現実的になります。
自分しか困っていないのでは、と怖がりすぎない
自分の不便をネタにしようとすると、「いや、こんなの自分だけでは」と不安になります。でも、自分が困ることはだいたい誰かも困っています。完全に一致しなくても、近い摩擦を抱えている人はいます。最初から何万人の問題である必要はありません。
むしろ、自分も使いたいと思えることの方が強いです。自分が最初のユーザーになれるからです。改善の速度も上がるし、使い続ける理由もあります。自分でも使わないものを、他人だけが使い続けてくれる前提の方が、かなり危ないです。
不便をそのまま全部解こうとしない
ここでありがちなのが、問題を見つけた瞬間に全部入りの構想へ飛ぶことです。管理画面も、通知も、共有も、分析も、連携も入れたくなる。でもそこまで行くと、ネタ探しではなく妄想の設計に変わります。
最初に考えるべきは、「その不便のど真ん中は何か」です。何が一番だるいのか。何がなくなるだけで、かなり楽になるのか。そこだけを切り出せると、初速が出ます。個人開発のネタは、広げるより削る方が形になります。
最初のバージョンは、恥ずかしいくらい小さくていい
ここはかなり大事です。自分の不便から始まったネタほど、最初のバージョンは小さく出した方がいいです。なぜなら、自分が一番つらい一点が分かっているからです。全部を盛る必要がない。むしろ盛るほど、不便の芯から離れます。
ForceDiscordOverlay の ver1.0.0 がいい例で、通話状況を最前面に表示できるという一点だけでまず出しています。このくらいの切り方の方が、本当に必要な機能が見えます。最初からいろいろ足したくなるのは分かりますが、それは課題を深く理解したからではなく、不安だから機能を増やしているだけのことが多いです。
「自分の不便」を「他人に伝わる言葉」に変える
不便をネタにできる人とできない人の差は、感じたことを言語化できるかです。ただ「だるい」では弱いです。どの作業で止まるのか。何を二回やっているのか。どこで迷うのか。これを言葉にすると、機能の方向が見えます。
たとえば「毎回ファイルを探している」なら、検索か整理か自動命名が論点です。「毎回同じ説明をしている」なら、テンプレートか共有ページかフォーム化が論点です。感情のままだとネタにならないけど、構造に言い換えると急に作れるものになります。
「通話状況をすぐ確認したい」が ForceDiscordOverlay になり、「通知をもっと強く前に出したい」が ForceNotification になり、「今やっている作業に合わせて裏のサービスを止めたい」がメモリ最適化ツールになります。愚痴のままでは何も生まれませんが、不便を機能の言葉に訳せると、一気に作る対象になります。
ネタ探しで大事なのは、外を見る前に内側を掘ること
SNS を見て流行りを追うのも悪くありません。でも、最初からそれだけだと浅くなりやすいです。自分が本当に困っていないテーマは、どうしても熱量が弱くなります。作る途中で飽きやすいし、公開後の改善も止まりやすいです。
その点、自分の不便から始まったものは、少なくとも「なぜ作るのか」がはっきりしています。これは思った以上に大事です。個人開発は、作るまでより、出したあとに直し続ける時間の方が長いです。そこを支えるのは、流行より自分の実感です。
自分の不便から始まったものは、説明の強さも違います。「こういう市場があります」より、「自分がこれで何回も止まった」が言える方が、やる理由が濁りません。個人開発で途中で折れない人は、技術力だけではなく、作る理由の温度が高い人です。
不便メモは、未来のネタ帳になる
おすすめなのは、不便メモを常に残しておくことです。メモアプリでも、DM の自分宛でも、テキストファイルでもいいです。大事なのは、思いついた時にすぐ書けることです。そしてあとで見返して、「これ三回以上出てきたな」というものを拾います。
良いネタは、突然ひらめくというより、同じ不便が何度も並んだ時に輪郭が出ます。だからネタ探しは才能というより採集です。日常から拾って、残して、並べて、その中から熱のあるものを作る。これだけでかなり十分です。
結局、作るべきネタは「自分が今すぐ欲しいもの」に近い
個人開発のネタを見つける方法は、難しくありません。自分の生活や作業の中で、不便だった瞬間を見逃さないこと。何度も起きる面倒を記録すること。それを一番小さい解決単位まで削ること。この流れです。ネタ探しを特別な才能の話にしない方がいいです。毎日の中にある「またこれか」をちゃんと拾えるかの方が大事です。
遠くの市場を当てに行く前に、自分の机の上にある不便を見た方がいいです。そこには、すでに温度のある課題があります。自分が困っていることを軽くできるなら、それは十分に作る理由になります。しかも、自分が最初のユーザーになれるので、改善も速いです。Project P の中で作ってきたものも、結局はそういう小さい不便の回収から始まっているものが多いです。
大きなアイデアを探すより、毎日の小さな不便を拾える人の方が、たぶん長く強いです。ネタは遠くにあるのではなく、自分がすでに何度も舌打ちしている場所にあります。そこを見つけて、最小で形にする。その積み重ねの方が、きれいな思いつきよりずっと強いです。
よくある質問
自分の不便だけを元に個人開発のネタにしても大丈夫ですか?
大丈夫です。自分が最初のユーザーになれるので課題の解像度が高く、改善も速いです。最初から大勢向けを狙うより、自分が何度も困っていることの方が具体的に作れます。
最初のバージョンはどこまで機能を絞るべきですか?
一番つらい不便が軽くなる一点まで絞るのが強いです。ForceDiscordOverlay の最初の版を通話状況の最前面表示だけで出したように、最初は恥ずかしいくらい小さくて十分です。
不便メモはどう残すのがいいですか?
その場で一行だけでも残せる方法がいいです。メモアプリでも自分宛のDMでもよくて、何をしていた時にどこで止まったかまで書けると、後でただの愚痴ではなく課題として扱えます。